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【発表論文】
日本語訳:高濃度アスコルビン酸は、ヒト胃印環細胞癌由来NUGC-4細胞においてがん細胞選択的な細胞増殖抑制と細胞死を誘導する
掲載雑誌名: Biochimica et Biophysica Acta - General Subjects, 2025, 1869(2):130738.
著者: Yasukazu Saitoh; Kaori Takeda; Koichi Okawachi; Yusuke Tanimura
【解説】
細胞機能制御学研究室(齋藤)では、副作用の少ない抗がんアプローチを目指す一環として、正常細胞には影響が少なく、がん細胞に対して有効な手法の探索(抗がん剤等の副作用低減を目指した研究)に挑戦し続けています。今回の論文では、我々が着目している酸化ストレス制御に基づくがん細胞への選択的アプローチとして高濃度ビタミンC (*)に着目し、胃がん細胞に対する効果とそのメカニズムの一端を報告しています。具体的には、高濃度ビタミンCが胃がん細胞NUGC-4に対して過酸化水素の発生を介して細胞形態の変化、増殖抑制や細胞死を誘導することを示すと共に、これまで報告の少なかった、その効果と鉄との関係性、細胞骨格への影響、酸化ストレス制御による効果の増強など明らかにしました。培養細胞を用いた基礎レベルの研究成果とはなりますが、こういった地道な研究の積み重ねが、将来、がんの抑制や発がん予防につながっていくと期待しています。本論文には研究に貢献した細胞機能制御学研究室の博士課程前期修了生および学部卒業生3名(竹田さん、大河内さん、谷村さん)も共著者として名を連ねています。また、本研究の一部はJSPS科研費20K11627, 23K10922および県立広島大学研究成果発表助成を受けて実施されたものです。
*今回の論文ではアスコルビン酸、正確には還元型ビタミンC(L-ascorbic acid)を指しています。
胃がん細胞が死滅する様子(タイムラプス撮影)
胃がん細胞に対するアスコルビン酸の影響(蛍光染色)
青色は核を赤色は細胞骨格タンパク質を示しています。
アスコルビン酸処理により細胞骨格に異常を示すがん細胞が複数みられます(白矢印)