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【発表論文】
複製老化細胞とストレス老化細胞は同質なのか?
~老化誘導方法の違いによる表現型と遺伝子発現パターンの差異~
掲載雑誌名:月刊「細胞」Vol. 57(2), 2025, p36-38.
著者:齋藤靖和
【解説】
生命科学コースの齋藤研究室(細胞機能制御学研究室)では「老化」、「皮膚」、「がん」をテーマにした研究を行っており、「老化」に関しては、特に細胞レベルの老化(細胞老化)に注目し、老化細胞の特性解析やその制御に関する研究を進めています。今回の総説では、これまでの研究成果の一部を紹介すると共に、今後の老化研究の課題や展望について述べています。
加齢に伴いヒトの体内には老化細胞が蓄積していき、様々な疾患の発症や進展に関わることが明らかとなり、老化細胞をターゲットとした創薬アプローチが急速に進んでいます。老化細胞の研究をするにあたり、細胞分裂の繰り返しによって発生する複製老化細胞とストレス曝露を契機に生じるストレス誘導性老化細胞が知られているのですが、どちらを研究に用いるべきかは悩ましく、そもそも両者を同じ老化細胞として取り扱って良いかどうかも定かではありませんでした。今回の総説では、複製老化とストレス誘導性老化細胞(ストレス老化細胞)の表現型と遺伝子発現の違いについて検討を行い、その結果から「類似性が認められるものの同質の細胞とは言い難い」と提唱しています。
この研究には、これまで多くの卒論生(青山さん、大和さん、今本さん、江川さん、渡辺さん、金井さん、田邊さん、水島さん、甲斐さん、船戸さん、岩本さん、木村さん、角尾さん、福島さん、中村(太)さん、小田さん、中村(達)さん、中村(友)さん、戒能さん、馬場さん)、修論生(中和さん、上月さん、秋山さん、福田さん、萩山さん)らが関わっており、先輩から後輩へと研究テーマを引き継ぎながら、老化細胞の解析/制御に関する研究が脈々と進められています。本研究の一部は、JSPS科研費20K11627および23K10922の助成を受け、実施されたものです。
齋藤研究室2024年度メンバー(2024.6撮影)