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藤岡 ゆみ
2022年度卒業
ルネッサンスジャパニーズランゲージスクール勤務
私が県立広島大学人間文化学部国際文化学科で履修した授業のうち,特に印象に残っているのは「日本語教授法」と「東アジア文化論基礎演習」です。
「日本語教授法」は外国人留学生と一緒に日本語の教育方法を学ぶ授業でした。なんとなく興味本位で受講した授業でしたが,日本語教育を実際に体験でき,さらに日本語を教える側(日本人学生)と日本語を学ぶ側(外国人留学生)が意見を交換することもあり,日本語教師という現在の仕事でもこの授業で得た知識等が大いに役立っています。
「東アジア文化論基礎演習」は異文化シミュレーションゲームを取り入れた授業が特徴的でした。約50人の受講者が日本とアメリカ合衆国,中国,ロシアなど6つのグループに分かれ,各国固有の文化(譲れない文化)について話し合いました。この授業を通じて,私は異国=異文化社会に暮らすということがどれだけ大変なのかを理解することができました。このことは,国籍もさまざまで,自国の文化を大切にしたい人も多く在籍する日本語学校での仕事にも大いに活かされています。
4年次に取り組んだ卒業研究のテーマは「オノマトペの日中翻訳における比較」でした。「ふわふわ」「とろとろ」など状態を表すオノマトペという語法は日本語以外にはないので,日本語の本にあるオノマトペは翻訳本ではどのように表現されているのだろうかという疑問を抱き,日本語の絵本を中国語に翻訳した絵本を対象に翻訳の特徴やプロセスを分析しました。この研究を通じてオノマトペと中国語に関する知識が増えました。
こうした幅広い分野の授業と卒業研究,留学生との交流などを通じて,私は日本語教師という自分の夢が見つかり,その後の仕事にもつなげることができました。
日本語を母語としない人たちに日本語を教える,「日本語教師」という仕事に興味をもったきっかけは,学生時代に地元の日本語教室にボランティアとして参加したことです。そこで自分の国の言葉なのにわかりやすく説明するのはこんなに難しいのかと実感し,何とかそれができるようになりたい,そのことを通じて日本語がわからなくて困っている外国人の役に立ちたいと考えるようになりました。
現在は,ルネッサンスジャパニーズランゲージスクールという広島県呉市にある日本語学校で日本語教師をしています。主な仕事内容は授業準備と授業,留学生の生活指導と進路指導です。授業では,例えば「頭がガンガンする」「胃がキリキリ痛む」など,病院で自分の症状を言えるように,留学生たちに必要な語彙や文型を教えています。生活指導では,留学生の買物やアルバイトに付き添ったりすることもありますし,人の話を聞く時にポケットに手を入れるといった外国では当たり前の行動が日本ではマナー違反に当たることなども教えたりもしています。進路指導では,資格取得のアドバイスをしたり,資格を取得できる専門学校への進学を後押ししたりしています。
日本語教師として活躍できる場として,国内では日本語学校やボランティア教室,海外では日本語学校や海外青年協力隊などがあります。パソコンとインターネットを使ったオンライン授業の講師として働くことも可能で,その場合は居住地や職場を固定する必要はありません。ただ,国内の日本語学校で働く場合は,「登録日本語教員」という国家資格を取得する必要があります。
私が県立広島大学で行った言語学習と異文化交流体験は,現在の仕事にとても役立っています。具体的に,中国語学習における学習者としての(苦労した)経験が学習者の立場に立った日本語指導につながっています。また異文化交流体験は,自分と相手の文化の違いを認め,相手のアイデンティティを尊重することにつながっています。これら